夢へと向かい続ける物語 Le☆S☆Caが「背中を押す」という楽曲を歌うこと

Tokyo 7th シスターズ(以下ナナシス)の 3rd アルバム『THE STRAIGHT LIGHT』がつい先日発売された.

黄色のジャケットと対照的に円陣を組んだキャラクターの形で抜かれるように鮮やかな夏空が印象的である.図らずもナナシス最初の CD であり,『THE STRAIGHT LIGHT』と同時に再販という形でプレスされた『t7s Longing for summer』もジャケットの春日部ハルの中に 777☆SISTERS のキャラクターたちが描かれている.

 

このエントリーを読んでくれている方にはナナシスが伝えようとしている「背中を押すこと」という想いがどんなものかというのは十分承知してくれていると思う.

知らない方はくろろ (id:kuroroblog) 氏の記事が詳しい.

kuroroblog.hatenablog.com

背中を押してくれる曲たち

さて,今回取り上げたいと思ったのは『THE STRAIGHT LIGHT』に収録されている Le☆S☆Ca の新曲である「ひまわりのストーリー」である.

ちなみに作詞が SATSUKI-UPDATE 氏であり,作曲が Hiramy 氏である.

アルバムが発売してから1週間が経ち,何度となく聞いていると,この曲が上述した誰かの「背中を押す」というテーマを強く反映しているのではないかと思ってしまい,こうして逸る気持ちをキーボードにぶつけているわけだ.

 777☆SISTERS が伝えたい想い

さっそくだが,みなさんはナナシスをイメージする季節はどれだろうか.私は『夏』であると思っている.

今回のアルバムジャケットしかり,777☆SISTERS の軌跡となってきた CD はどれも夏に発売している(e.g.『僕らは青空になる/FUNBARE☆RUNNER』,『スタートライン/STAY☆GOLD).

なにより前述した最初のアルバムも『t7s Longing for summer』であることからナナシスは『夏』への羨望のようなものが表れているように感じられる.

少し話がそれてしまうが,上にあげた二枚のシングルおよび「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」(むろん「ハルカゼ〜You were here〜」もであるが)はいわゆるアイドルらしさを歌った曲ではなく主人公がいない,いわばナナシスという作品そのものが,ナナシスに出会い救われた,変われた,もしくは変わりたいという意志がある,そういった人間に焦点を当てたジェネリックなトラックになっている(正確に言うと語弊があるがここではそれに触れない).

これは総合音楽プロデューサーである茂木監督も様々なところで触れている(e.g. Tokyo 7th Sisters COMPLETE MUSIC FILE).

ナナシスのこういった曲に挙げられる共通点としては曲中の一人称が「僕」であり二人称が「キミ(君)」であることだ.歌い手や受け取り手を明示しないことでより一般化したアンサーソングにしているのであろう.

あなただけを見つめる 

実はこの特徴が「ひまわりのストーリー」にもよく当てはまる.

また,この曲は『夏』『青空』『入道雲』『ひまわり』『旅』と夏を形容するメッセージがふんだんに盛り込まれている.聞いているだけでも抜けるような青空の下,麦わら帽子をかぶった女の子がひまわり畑の中に佇んでいる画が浮かんできそうな非常に爽やかでいてそれでいてどこか郷愁を感じさせるトラックである.

Le☆S☆Ca は「タンポポ」や「YELLOW」という楽曲も歌っている.タンポポの花は黄色であるし,YELLOWはそのまま黄色ということで Le☆S☆Ca は何かと黄色に縁がある.

Le☆S☆Ca という3人組ユニットは爽やか系微炭酸なユニットであるが,「Behind Moon」や「トワイライト」などのバラードをしっとりと歌い上げる黒 Le☆S☆Ca も非常に魅力的なトリオである.

 

突然だが,ひまわりの花言葉を知っているだろうか?

ひまわりは太陽の方を向き続けるという性質を持つことから「あなただけを見つめる」転じて「あこがれ」などがあるらしい.

この「あなただけを見つめる」というセンテンスは曲中でも登場する.

そして,ここで重要なのは〈ひまわり〉は〈太陽〉つまりは〈光〉あるいは〈青空〉の方向を向くということである.

夢を追う子供と夢を捨てた大人の対比

ここで少し歌詞を追っていきたいと思う.

1番Cメロ

キミはいつかの少年

頬濡らして旅に出ようと靴を磨いた

とあるが,これは何らかの理由で夢破れた少年がまた,別の道を志しているという風に捉えることができる.

そしてこの後

もう一度 翔ぶ気なら

青空まで連れてってあげる

と続く.さきほど引用したブログにもあるようにナナシスにおける〈青空〉は物語の核となる意味を孕んでいることから,この〈青空〉に連れてってあげるということはまさに「背中を押す」ことに他ならない.

1番サビ

誰でもないキミ探して

入道雲に届きそうさ

ここでは,まさに他の誰でもない自分自身が入道雲に届くほど高く翔んでいることを表している.

そして最後の一節

光に向かって綺麗に咲いた

ひまわりのような物語

夢を追う「キミ」がしっかりと〈夢=光=青空〉に向かって花開いていくというこの曲の本質をこの詞がはっきりと示していると感じる*1

2番Aメロ

握りしめた切符を

上手に隠してきたから

回り道をしたけど

これだけは間違いじゃない

切符には終着点がある.つまり夢の到達点までの道程に紆余曲折あれど,目指した夢こそ間違いではない,そう訴えているように感じる.

2番サビ

1番と2番で対照的な詞がある.それは

夢を追い越す子供みたいさ

大人になんかなるなよだって

である.この「子供」と「大人」という対比,実は「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」にも用いられており,それは

何も知らない子供と

夢を捨てた大人の間でまた少しづつ変わってく

という部分である.

この曲も,「現実」に逃避してしまい夢を諦めるような「大人」になるなということを示唆しているのだと思う.

ひまわりだって

雨に耐えて

太陽だけを見つめてる

「僕らは青空になる」が伝えてくれたように,光を見つづける,目標に向かって一意専心することはそんなに簡単なことじゃない.でもひまわりだって苦難の中にありながらも一心に太陽を見つめているんだ.

間奏後Cメロ〜ラスサビ

ラスサビ最後の一節は

光に向かって綺麗に咲いた

キミだけをいま見つめてる

であり,キミがひまわりのように〈光〉つまり〈夢〉に立ち向かうという様を描写し,「僕」はそんなキミをずっと見つめ続ける.こうして「キミ」もいつか誰かの〈光〉になるんだ.


長々となってしまったが,以上が「ひまわりのストーリー」から読み取ることができるナナシス像である.

777☆SISTERS の楽曲たちは背中を押して送り出すといったような解釈ができるがこの曲はキミに寄り添いながら,ともに歩もうという姿勢が Le☆S☆Ca らしいのかもしれない.

「太陽」と「ひまわり」,そして「ひまわり」と「キミ」,「太陽」と「青空」などアナロジーが多すぎてラスサビの解釈がまだ十分にできていない.しかし,この世にまた最高の楽曲が産み落とされたということは確信を持って言えるだろう.

もちろん,ここに書いてあることは私の主観であるので,これを読んだ人の解釈は自由であることを補記しておきたい.

そしてこの記事を読んでくれた人が「ひまわりのストーリー」に対して新しい視点を持って聞いてくれれば至上の喜びである.

 

2018.07.19 追記

ひまわりのストーリーについて,先達が考察していたブログがあるので,備忘録的に記録しておく.どちらもゲームという側面からも接近しているので,説得力のあるものとなっている.

・ナカイ氏

nki26.hatenablog.com

・SAK氏

sakstyle.hatenablog.com

*1:この話が書きたいがためにここまでの前座があった

未完成の大器“SPRiNGS”

 

2017.12.24

この日付は温泉むすめの歴史の中に永遠に刻まれるであろう.世間はクリスマスイブの真っ最中であるが,我々オタクは声優に会うために なかのZERO 大ホールで開催された 温泉むすめ SPRiNGS 2nd LIVE“NOW ON☆SENSATION!! Vol.2” ~聖夜にワッチョイナ!!~ に参加していた.

前回の 1st ライブは2017年8月と約半年という短いスパンではあったが,キャストの方々の Twitter での発言やメディアのインタビューから並々ならぬ熱量を持ってレッスンなどに取り組んでいたことが窺えた.

本稿は温泉むすめのことを知らなかったり,好きな声優がいずれ温泉むすめとしてライブに参加するであろうと危惧しているオタクにも分かるようにバックグラウンドなども含めて説明していきたいと思っている.長文になってしまったので温泉に入っているオタクは逆上せないように気をつけて欲しい.

温泉むすめのことを十分に理解しているというオタクは読み飛ばしてもらって構わない.

ライブ感想へ

温泉むすめとは

まず温泉むすめとはなんぞや,という話ではあるが公式サイトには以下のように記載されている.

日本の各地温泉に宿る下級の神様、温泉むすめ

(中略)

そんな彼女たちはある日、温泉を司る神【スクナヒコ】からアイドル活動開始の布告を受ける.

「日本各地の温泉地を盛り上げるため、お前たちには今後アイドルとして活動して、さらに全グループが“人々を沸かせ、癒すこと”の頂を目指して競い合ってもらう!」

(後略)

 

onsen-musume.jp設定がさっぱり分からんし,曲はおろかドラマCDにもこの設定が十全に活かされていると感じたことはない*1

まあこの設定を知らなくてもイベントに参加する支障はない.

そもそも温泉むすめって何のために立ち上げられたプロジェクトなんだ,と気になる方は下記リンクを参照してほしい.ざっくり言うと2020年の東京オリンピックで来日する外国人をターゲットにしたプロジェクトであるらしい.

ddnavi.com

メインユニット SPRiNGS

さて,ここで触れなくてはいけないのが“SPRiNGS”というユニットである.

上のイントロダクションにも名前があるが温泉むすめというコンテンツにおいてその中核を成すのが SPRiNGS というユニットである.

温泉むすめというコンテンツの性質上,各キャラクターは温泉地の名前を付けられている.ユニットに参加しているメンバーとその声優は以下の通りである*2

  • 草津 結衣奈:高田 憂希(2年生,センター
  • 箱根 彩耶:長江 里加(2年生)
  • 秋保 那菜子:高橋 花林(2年生)
  • 有馬 輪花:本宮 佳奈(3年生)
  • 道後 泉海:篠田 みなみ(3年生,リーダー
  • 登別 綾瀬:日岡 なつみ(3年生)
  • 有馬 楓花:桑原 由気(1年生)
  • 下呂 美月:遠藤 ゆりか(1年生)
  • 奏・バーデン・由布院:和多田 美咲(1年生)

彼女らはお台場にあるという「温泉むすめ師範学校」なるものに通っているため,学年という概念が存在する.SPRiNGS の曲は例外なく学年ごとでパート分けされていたりするのでそれに注意しながら聞くとエモくなれたりもする.

                                                                                                                                                             

SPRiNGS にとって 2nd ライブが持つ意味

イントロダクションが長くなってしまったがここからが本題である.そもそもこうして改めて記事にしたかったのは今回の 2nd ライブが我々オタクだけでなく SPRiNGS にとってもターニングポイントとなるライブだったからである.

これを読まれている方はご存知かと思うが,2nd ライブの1週間前に下呂美月役の遠藤ゆりかさんが2018年の5月末日をもって芸能活動から身を引くという報告があった.

そんな遠藤ゆりかさんが 1st ライブに一人だけ参加できず悔しい思いをしたのは想像に難くない.そういった背景もあり初めて SPRiNGS 全員が大きなライブで揃うということは非常に大きな意味を持っていた*3

そんな否が応にも期待が高まっていたライブが一転,遠藤ゆりかさんが引退をされるということで最初で最後の SPRiNGS が9人揃うライブとなってしまったわけである.

キャストの方々がどのタイミングで知らされていたのかは見当もつかないが,そんな状態でもしっかりとレッスンをこなしながら最高のパフォーマンスを見せてくれたキャストの方々の精神力や作品への姿勢は筆舌に尽くし難い.

ここから,各楽曲について所感をつらつらと綴っていこうかと思う.セットリストが昼と夜で多少違うのでその場合は両方について述べる.気になった方は是非試聴動画を聞いてみて欲しい.

1. 純情-SAKURA-

まず最初に 1st ライブが初披露であった赤と黒を基調とした衣装で SPRiNGS が登壇した.ステージはまだ暗転したままで SPRiNGS が三つ指をついた状態からイントロへ.

この時,まるで旅館でお出迎えされているような不思議な感覚に陥ってしまった.しかしライブの始まりとしてはある意味ふさわしく,温泉むすめらしいと言えるだろう.声優の土下座フェチのオタクがいるのなら是非ともライブで見届けて欲しい.

 曲自体はド直球の和ロックで,こういう楽曲が違和感なく歌えるのが温泉むすめの強いところだと感じる.何より2番のサビがなく,そのままCメロ間奏に入るのがニクい構成である.

歌詞は花(恋)は命が短いからこそ,その短い間に咲き誇ろうとする“粋”を表現しているのだろうか.

曲中に次のような歌詞がある.

どうか 振り向かないでいて

泣きそうな顔など 見せたくない

上段は下呂美月のパートであり,すなわち遠藤ゆりかさんが歌っている.引退しても SPRiNGS は振り向かないでまっすぐ進んで欲しい,というエールと取ることもできるだろう.全くの偶然とはいえ 2nd ライブにおいては特別な意味を持ってしまった曲の一つであると考えている.ちなみに下段は秋保那菜子(高橋花林さん)のパートである.こんなパート割り泣いちゃうんだよな……

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2. Ambition

記憶がない.深く考えなくても衝動的にクネクネしながらジャンプしたくなる曲.サビのダンス,特に拳を上げるところがかっこいい.

見所はCメロの高田憂希さんのソロから落ちサビで全員が声を合わせて「届け!」とぶちこんでくるところだと思う.

SPRiNGS は「届ける」というようなニュアンスの言葉が多く歌詞でも用いられているところが卑怯.これに関しては後述したい.

あと,この曲にも読みこそは違うが「未来」というワードが入っているのがとても良い.

あまりに書くことがないので温泉むすめ展で純情-SAKURA-と Ambition の衣装を撮ってきたのでそれでお茶を濁すことにする.高田憂希さんがお召しになっていたものだが,センターであるからか,一番装飾が凝っているのがとても良い.PV で気に入った衣装があったなら是非ライブに来て欲しい.

というか衣装の名前が「赤黒」って雑すぎやしないか……

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3. 70億分の9の奇跡(昼のみ)

一度簡単な挨拶を挟み,70億分の9の奇跡へ.

この曲は SPRiNGS の歩いてきた“軌跡”を表しているような曲である.是非歌詞カードなどを見ながら今一度曲を聞き返して欲しい.

これまで歩いてきた道程や「不揃いの影」という歌詞が表しているように個性豊かなメンバーがそれぞれ同じ夢を見ているという奇跡.それを成し遂げるのは「70億分の1の道は なかなか大変」だが「ミンナとなら乗り越えていける」.そんな70億分の1の奇跡が重なり合い 70億分の9の奇跡 になる.そんなエールや団結を表現している曲である.

イントロは高田憂希さんのソロパートから始まるのだが,このとき高田憂希さんは他のメンバーよりも後ろに下がり歌いながら前に歩いてくるというフォーメーションになっている.これはまさに SPRiNGS の始まりである.

ラスサビの「そうだよ きっとそうでしょう?」は高田憂希さんのソロパートなのだが,その時に一歩前に出て他のメンバーの顔を見渡し,他のメンバーはそれにしっかりと頷き返し全員で「ヨロシク My Friends」で締めくくる.まさにこの一曲で SPRiNGS の軌跡と奇跡を表現していると私は感じている.

全員揃ってステージに立てることは決して当たり前なことではなく,70億分の9の奇跡というのはまさに SPRiNGS そのものなのである.2017年の聖夜の日,この曲が初めて「70億分の9の奇跡」になったのだと思う.

しかしこの曲は SPRiNGS の成長とともに違う意味を持つようになる曲である.

なぜなら SPRiNGS はまだまだ未完成であり,だからこそ無限の可能性が広がっているからだ.彼女らがこれからしていく経験も合わさって更にこの曲は成長していく.それはまさに下の歌詞が示していることであろう.

一秒先の未来目指して 坂道を駆け上がってく

おなじ空の下で 学び笑いあおう

365日先には まだまだ知らない世界が

広がってる どこにでも行ける

新しい下呂美月としてステージに立つ声優の方の夢も合わせて「70億分の10の奇跡」を 3rd ライブでは見られることを願っている.

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4. SILENT VOICES - 雪月花(有馬 輪花,箱根 彩耶,奏・バーデン・由布院

温泉むすめの楽曲の中で最もパフォーマンスと歌唱に圧倒される曲と言っても過言ではないだろう.この曲の醍醐味はなんと言っても3人それぞれが異なるメロディーラインを歌い,それが複雑に入り乱れて一つのハーモニーを奏でるところであろう.

長江里加さんは箱根ちゃんとして歌うときはみんなの土台となるような歌い方をしている,と各所で語っているがそれが如実に表れている曲だと感じる.

一方で,有馬 輪花役の本宮佳奈さんの高音域についても触れなくてはいけないだろう.彼女の歌を寡聞にして知らなかったので,初めて聞いたときはとてつもない衝撃を受けたものだ.

実際 1st ライブはこの曲を拾いに行ったところがあったのだが,生でこの曲を聞いたことで温泉むすめの楽曲に真剣になろうと決意してしまったほど静かながらも莫大な熱量を内在している曲である.

声は伝わる 歴史さえ変える 静かなチカラ

これはこの曲の最後の一節だが,まさにこの曲で私の歴史は変えられてしまったのである.

 

余談ではあるがこの曲は次のような歌詞もあるのでオタクは思ったことをブログに綴らんかい.

借り物の言葉じゃなくて ほら 感じること 語り合おう

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5. MC

ここで一旦歌唱コーナーは終わりMCへ.アイドル衣装に着替えた SPRiNGS が登場し,雪月花の3人はお着替えへ.よく考えると赤黒衣装で SILENT VOICES を歌ったのはアッパレすぎるな.

内容自体は着替え待ちの尺稼ぎのようなもので,道後 泉海役の篠田みなみさんが「温泉むすめってなに?」という今更な内容を恒例のパワポで説明していくもの.

昼夜とも桑原さんが飽きたのか途中からスクリーンを見なくなっているのを見て和んだ.

雪月花メンバーが戻り,次の曲へ.

 

6. さよなら花火(昼)/粉雪フレンズ(夜)

MC明け一発目がさよなら花火とは,なかなか粋じゃないかと思った.

この曲はピアノがとてもいい味を出していて,夏のお祭りの高揚感や綺麗な花火の中に潜む一瞬の切なさを見事に表現していると思う.特にイントロのピアノはさよなら花火の妙味ではないだろうか.

この曲は全員が中心に集まり,各々座っていたり立っていたりするところから始まるのだが,この時全員がそれぞれ違う方向に向いているのが曲のテーマと見事にマッチしているのではないかと感じる.さよなら花火は陣形や,ダンスでの位置どりが非常に美しいので是非注意してみて欲しい点でもある.

粉雪フレンズは後述.

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7. おんくり

フリが最高な曲その1.

2nd ライブを前にして発売された 1st シングルの c/w.イントロのコーラスはユニット雪月花が担当している.

元々は温泉クリスマスという曲名であったが SPRiNGS のリーダーである篠田みなみさん(道後 泉海)が「おんくり」と命名したことでこの曲名になったそう.

その名の通りクリスマスを歌った曲だが,歌詞の随所に温泉らしさが表れている温泉むすめらしいナンバーである.夜の部では粉雪フレンズのあとにこの曲を歌うという神アクトを見ることができた.

多分に漏れず,この曲もAパートが2年生→1年生→3年生のように学年ごとのパート割りになっているのだが,歌っていない学年のメンバーが階段に座ってリズムをとっているところがとてもかわいいので是非見て欲しい.

そしてフリの話題を出した上で外せないのが

お庭のわんこは トナカイに変身

 のパートである.詳しくは言わないがここのダンスでやられたオタクは多いかと思う.まことあっぱれである.

この曲を聖夜に全員で歌えたことはそれこそ聖夜の贈り物だったのかもしれない.

出会えた奇跡に ほんと ありがとう なんやな……

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8. MC(朗読劇)

1st の温泉卓球コーナーに次ぐクソコーナーが始まるかと思いきや朗読劇をやるらしい.ライブ製作陣の伸びを感じた.

内容としてはざっくり言うとセンターである草津 結衣奈のユニット内での立ち位置という物語であったが,延いてはキャストの方々たちがこれまで培ってきた信頼や絆を表したものだったのだろう.基本的には昼と夜の台本は同じだったが,夜の部のみ高田さんからメンバー全員への感謝の言葉のようなものが追加されていたのが良かった.

というか楓花のキャラ性を活かしたかったのかもしれないけど桑原由気さんの出番があまりにも少なすぎるのではないだろうか.こういったユーモアセンスの欠落を何度見せたら気が済むのだろうか温泉むすめ製作陣は……

それはともかく,シナリオの軸としては未来イマジネーションという SPRiNGS の代名詞とも言うべき曲を踏まえて,次なるステップとなるような“飛躍”を感じさせる曲を作ろう,というものであった.その過程で執拗に『同じ未来をイマジネーションしている』や『ホップ ステップ ジャンプ』などと連呼しているのは少し興ざめだったが,これまでの SPRiNGS から一歩踏み込んだ“絆”をテーマとした Hop Step Jump! という曲への導入を見事(?)に達成していたと思う.

劇中で下呂 美月役の遠藤ゆりかさんが「青信号」という言葉を連呼していた部分が個人的には記憶に強く刻まれている.深読みになってしまうが「SPRiNGS の進む未来は青信号」というのはステージを下りざるを得ない遠藤ゆりかさんから SPRiNGS メンバーへのエールだったのではないかということだったのではないだろうか.実際 Hop Step Jump! には下記のような歌詞がある.

強気な 君にエール おくるよ

今回の朗読劇は SPRiNGS の支柱であるセンターのポジションを改めて明確にし,次なるステップの曲がどういった過程で生まれたものであるかということを短い時間のなかで伝えてくれたという点はとても評価できるものであったと思う.

9. ロマンスの林檎 - しゃんぷーはっと(秋保 那菜子,登別 綾瀬,下呂 美月)

朗読劇が終わり,再び歌唱へ.ステージ上にしゃんぷーはっとの面々+和多田美咲さんが残る.

1st ライブに来たオタク各位ならわかるかと思うが 1st では奏・バーデン・由布院役の和多田美咲さんが遠藤ゆりかさんの代打としてロマンスの林檎を歌っていたという経緯がある.したがってこの4人が舞台上に残っていた時はまさかのドリームチーム結成か?!と慄いてしまったが,和多田さんは簡単な曲フリをした後に捌けていった.後日,和多田さん本人に訊いたところ,バトンを渡すということで残っていたそうだ.エモすぎる……

さらに 1st では秋保 那菜子役の高橋花林さんも夜の部は体調不良のため残念ながらロマンスの林檎を歌えなかった経緯がある.

そんなハプニングに見舞われがちなしゃんぷーはっとであったが,今回初めて全員が揃いロマンスの林檎を歌えることになったわけである.

この曲は歌詞や曲調からいわゆる“かわいい系”のアイドルソングではあるのだが,歌っている温泉むすめは全員がかわいいからは離れているキャラクターであり,そんなキャラクターたちが自分たちなりの“かわいさ”というものを表現しているというなんとも微笑ましい曲である.ライブ中は基本的に眼鏡を外している下呂 美月がこの曲では眼鏡をきちんとつけているというところもとても好きだ.そんな下呂ちゃんが眼鏡を外して「すきなんだー!」と叫ぶところは必見であろう.

高橋花林さんが素敵な笑顔でこの曲を歌えているという事実だけで本当に救われた気持ちになる.

この曲をこの3人が笑顔で歌いきれたことが何よりであろう.「でも 楽しいっちゃね!」

ここで今一度提唱したい.ロマンスの林檎は泣き曲であると.みんなもライブで聴いてオンオオむすめになろう.

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10. おはようジャポニカ - SPicA(草津 結衣奈,道後 泉海,有馬 楓花)

ライブにはこういう曲も必要だよね.オタクの偏差値が70億分の9くらいになる曲その1.ひたすらワッショーイ!しよう.

強いて言えば SPRiNGS の暴れ馬二人に振り回される道後 泉海役の篠田みなみさんに注目すると楽しくなれる.

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11. SPRiNGS のこれまでの軌跡

1st でも流れた謎の振り返り映像.クラウドファンディングの時期を除くとまだ一年も経ってないんですが……

まあこうして見ると色んな所に行ってるんだなぁと3秒くらい感慨にふけってしまった.この記事を書いてる今日も鹿児島でイベントをやっているし,2018年は地方イベントが多くなりそうな予感.

12. Hop Step Jump!

新衣装に身を包み再び SPRiNGS が登壇.恒例の「回って〜」を篠田みなみさんがねだって沸く会場.オタクは単純.衣装についての話を終えたのち曲へ.

この曲は SPRiNGS の 1st シングルであり,これまでとこれからの SPRiNGS を歌っている曲である.メンバーも「アニメ2期のOP」と称しているだけあって新しいスタートを感じさせる爽やかなメロディーと無限の可能性を感じさせる歌詞と隙がない.

個人的にこの曲は70億分の9の奇跡のアンサーソングになっていると感じている.

70億分の9の奇跡はまさにスタートを切った SPRiNGS であり,これからへの期待とそれに伴う不安というものが感じられるが,Hop Step Jump! はそれすらも「ナンバーワンを目指して」や「オンリーワンって無敵さ」などのようにポジティブに捉え直している.さらに強く表れていると感じるのが2番Aにおいて

この世界は 知らない事だらけ出来てる

四角だと思っていた空も 遠く果てしなく続く

どこまで行けるかな

と,広がる未来への期待を歌っており,その後に1番とは構成を変えて間奏を挟むところは天才である.更にそこから2番Bは次のような歌詞にきて

今日の苦手を 抱きしめて(キラキラ光る)

汗のしずくが 星になる(フレフレ勇気*4

逃げないひとの 決意はうつくしい

Ready Go! Go! Go! いまこそ!

ここまでくると意味不明すぎる.SPRiNGS ちゃん,半年で成長しすぎではないか?聞くたびに感情がグチャグチャのバケモンになってしまう.オンオオむすめその2.

そしてこの曲がこれまでの SPRiNGS と一線を画しているのは何と言ってもラスサビ前の台詞パートであることに異論の余地はないだろう.メンバー一人一人がそれぞれの想いを繋いでいき,それが最後には絆を結ぶ.このクサくも重い“絆”というテーマを歌えるほど SPRiNGS というユニットはメンバー間だけでなく声優とキャラ間の理解も深まってきているのだろう.

この台詞パートを実際に歌って初めて本当に絆が結ばれた気がしたと長江さんが言っていた*5が,実際その通りだと私も思っていて,あの日歌って初めて Hop Step Jump! が完成したのである.

余談だが,この曲はフリコピが楽しいのでみんなもワイパーしよう.

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13. さよなら花火(夜のみ)

基本的に昼のものと感想は変わらないが,この遅い順目に持ってきたのは遠藤ゆりかさんを送り出すという意味を持っていたという意見もあるらしく「なるほどなぁ」となってしまった.

実際,さよなら花火はラスサビの

おもかげに 身を焦がす お別れ花火(さよなら)

夏はもう終わりだね バイバイ……バイバイ(ありがとう)

において「さよなら」の部分は下呂 美月パートであり,夜は遠藤ゆりかさんの歌声が昼よりはるかに感情が込められていたのは記憶に強く残っている.何よりそれに続くような形でリーダーである道後 泉海役の篠田みなみさんが「ありがとう」と言う構成は最早作為的なものを感じてしまうレベルである.

確かに顧みると夜の部は遠藤ゆりかさんへの餞となるような構成になっていたので,そのような意味を持っていたと考えるのが道理だろう.

14. 青春サイダー

偏差値70億分の9になる曲その2.おそらく温泉むすめの中で一番有名かつ盛り上がる曲であることは間違いない.

サビの一部をCメロめいたエモめのメロディーにして炭酸の弾ける音と共にラスサビが始まるという構成は天才的だと感じる.

青春サイダーは何回も歌ってきているので,SPRiNGS メンバーもオタクたちを煽るのが堂に入ってきたと思う.

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15. MC

ここらへんの特報は公式で告知されているので特に書くことはないが,AKATSUKI ライブ参戦は正直とても嬉しいものだった.別府に行かれる方は楽しんでほしい.

大分県繋がりで和多田さんも参加されるそうだが,由布院でのライブはいつになるのだろうか……そもそも由布院周辺にライブ会場があるかも知らないけれども……

 

追記(2018.01.09)

書くのを忘れていたため追記.夜の部において今回の公演が円盤化遠藤ゆりかさんの口から告げられた.詳細は未定.

 

16. 未来イマジネーション

1st ミニアルバムのリード曲であり,温泉むすめのテーマが色濃く反映されている曲である.ストレートな前向きアイドルソングであり,温泉地の魅力を届けたい!という想いをそのままに歌ったような曲であり,歌の各所に温泉の要素が散りばめられているのが温泉むすめらしい.ダンスもそれに合わせたような温泉(というかお風呂だが)でやるようなものが多くなっていてかわいい.

ラスサビ前の間奏で最下手にいるリーダーの篠田みなみさんが号令を掛けて横一列に並ぶというフリがあるのだが,この並びもどんどん綺麗になってるとかいうエモエピソードが飛び出してきた時には流石に頭を抱えてしまった.フォーメーションで伸びを感じる曲は強い.

ちなみに間奏の鹿威しの音の直前のタメは声優が思い思いの表情をしているので声優オタクの方は推しから目を離さないようにしましょう.

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17. encore - 粉雪フレンズ(昼のみ)

アンコール後にまず驚いたのがまたも衣装替えをして出てきたことである.

どうやらぽか女将*6限定イベントで着ていたものらしいがまだ一年目なのに5つも衣装があるという力の入れどころがよくわからない作品である.

曲の話に移ろう.

粉雪フレンズは 1st ミニアルバムの締めを飾る曲である.アルバム一曲目の未来イマジネーションで「ほら 笑顔になって 手をつないで」と繋いだ手が「あなたにも届くといいな つないだ手のぬくもり」と粉雪フレンズでも繋がれている.つまり SPRiNGS の手はアルバムを通して繋がれたままと解釈できる.

この曲は SPRiNGS が何かを伝える(届ける)というよりは,一度自分たちを客観視した時に日常の中にある幸せに焦点を当てて,彼女たち自身も元気をもらっているような曲ではないだろうか.つないだ手のぬくもりは,普段はあまり意識しないけれど冬の寒さがあるからこそ気づくことができる.そこにいつも在るということはどれだけ幸せなのかという大切さを教えてくれたのがまさに遠藤ゆりかさんの存在だったんだろうなぁと,そんな感じに思ってしまった曲である.

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18. 終演挨拶

これはオタクごときが語っていい内容ではないので,現地にいた人は自分の胸の内で処理してほしいし,惜しくも来られなかった人は Blu-ray を購入して自分の耳と目で咀嚼してほしい.

19. 70億分の9の奇跡

曲フリで涙声な高田憂希さん,そういうところが好き.

アンコールでの70億分の9の奇跡は,声優各位が同じステージに立てた奇跡を噛みしめるように歌っていたのが印象的だった.アンコールで歌うと違う顔を見せる曲はやっぱり素敵だね.

夜の部はアウトロで遠藤ゆりかさんをセンターにみんなで固まるようにして終わったのはアッパレの一言に尽きる.

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総括

10,000 文字超と随分と長くなってしまったが,これでも語りきれなかった SPRiNGS の魅力は山ほどある.まさに無限の可能性を秘めている未完の大器である.本稿では割愛したが,声優のバックボーンなどを踏まえるとまた違った見方ができるとても魅力的なユニットである.

ここで述べたのはあくまで私の所感であるが,温泉むすめに少しでも興味が湧いた人は是非イベントやライブに来て貴方だけの SPRiNGS を見つけて欲しい.何かと悪い噂が絶えない温泉むすめだが,SPRiNGS というユニットの魅力はそういった悪評を抜きにして語るべきであると感じている.3rd ライブも5月に決まっているので,足を運んでみては如何だろうか.

 

*1:現在小説も発売されているがそちらで言及はあるかもしれないが私はまだ読めていないので悪しからず

*2:アイドル特有のキャラカラーも存在している

*3:YUKEMURI FESTA では神戸と仙台の二度揃っていたがここではライブと銘打ったイベントに限定している

*4:勇気というパートを高田“憂希”さんが歌っているのは本人もネタにしていたが,冷静に好きすぎる

*5:あまり記憶がないので長江さんじゃなかったら申し訳ない

*6:よく知らないが温泉むすめのファンをぽか旦那とぽか女将と呼称する文化があるらしい