夢へと向かい続ける物語 Le☆S☆Caが「背中を押す」という楽曲を歌うこと
Tokyo 7th シスターズ(以下ナナシス)の 3rd アルバム『THE STRAIGHT LIGHT』がつい先日発売された.
黄色のジャケットと対照的に円陣を組んだキャラクターの形で抜かれるように鮮やかな夏空が印象的である.図らずもナナシス最初の CD であり,『THE STRAIGHT LIGHT』と同時に再販という形でプレスされた『t7s Longing for summer』もジャケットの春日部ハルの中に 777☆SISTERS のキャラクターたちが描かれている.
このエントリーを読んでくれている方にはナナシスが伝えようとしている「背中を押すこと」という想いがどんなものかというのは十分承知してくれていると思う.
知らない方はくろろ (id:kuroroblog) 氏の記事が詳しい.
背中を押してくれる曲たち
さて,今回取り上げたいと思ったのは『THE STRAIGHT LIGHT』に収録されている Le☆S☆Ca の新曲である「ひまわりのストーリー」である.
ちなみに作詞が SATSUKI-UPDATE 氏であり,作曲が Hiramy 氏である.
アルバムが発売してから1週間が経ち,何度となく聞いていると,この曲が上述した誰かの「背中を押す」というテーマを強く反映しているのではないかと思ってしまい,こうして逸る気持ちをキーボードにぶつけているわけだ.
777☆SISTERS が伝えたい想い
さっそくだが,みなさんはナナシスをイメージする季節はどれだろうか.私は『夏』であると思っている.
今回のアルバムジャケットしかり,777☆SISTERS の軌跡となってきた CD はどれも夏に発売している(e.g.『僕らは青空になる/FUNBARE☆RUNNER』,『スタートライン/STAY☆GOLD).
なにより前述した最初のアルバムも『t7s Longing for summer』であることからナナシスは『夏』への羨望のようなものが表れているように感じられる.
少し話がそれてしまうが,上にあげた二枚のシングルおよび「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」(むろん「ハルカゼ〜You were here〜」もであるが)はいわゆるアイドルらしさを歌った曲ではなく主人公がいない,いわばナナシスという作品そのものが,ナナシスに出会い救われた,変われた,もしくは変わりたいという意志がある,そういった人間に焦点を当てたジェネリックなトラックになっている(正確に言うと語弊があるがここではそれに触れない).
これは総合音楽プロデューサーである茂木監督も様々なところで触れている(e.g. Tokyo 7th Sisters COMPLETE MUSIC FILE).
ナナシスのこういった曲に挙げられる共通点としては曲中の一人称が「僕」であり二人称が「キミ(君)」であることだ.歌い手や受け取り手を明示しないことでより一般化したアンサーソングにしているのであろう.
あなただけを見つめる
実はこの特徴が「ひまわりのストーリー」にもよく当てはまる.
また,この曲は『夏』『青空』『入道雲』『ひまわり』『旅』と夏を形容するメッセージがふんだんに盛り込まれている.聞いているだけでも抜けるような青空の下,麦わら帽子をかぶった女の子がひまわり畑の中に佇んでいる画が浮かんできそうな非常に爽やかでいてそれでいてどこか郷愁を感じさせるトラックである.
Le☆S☆Ca は「タンポポ」や「YELLOW」という楽曲も歌っている.タンポポの花は黄色であるし,YELLOWはそのまま黄色ということで Le☆S☆Ca は何かと黄色に縁がある.
Le☆S☆Ca という3人組ユニットは爽やか系微炭酸なユニットであるが,「Behind Moon」や「トワイライト」などのバラードをしっとりと歌い上げる黒 Le☆S☆Ca も非常に魅力的なトリオである.
突然だが,ひまわりの花言葉を知っているだろうか?
ひまわりは太陽の方を向き続けるという性質を持つことから「あなただけを見つめる」転じて「あこがれ」などがあるらしい.
この「あなただけを見つめる」というセンテンスは曲中でも登場する.
そして,ここで重要なのは〈ひまわり〉は〈太陽〉つまりは〈光〉あるいは〈青空〉の方向を向くということである.
夢を追う子供と夢を捨てた大人の対比
ここで少し歌詞を追っていきたいと思う.
1番Cメロ
キミはいつかの少年
頬濡らして旅に出ようと靴を磨いた
とあるが,これは何らかの理由で夢破れた少年がまた,別の道を志しているという風に捉えることができる.
そしてこの後
もう一度 翔ぶ気なら
青空まで連れてってあげる
と続く.さきほど引用したブログにもあるようにナナシスにおける〈青空〉は物語の核となる意味を孕んでいることから,この〈青空〉に連れてってあげるということはまさに「背中を押す」ことに他ならない.
1番サビ
誰でもないキミ探して
入道雲に届きそうさ
ここでは,まさに他の誰でもない自分自身が入道雲に届くほど高く翔んでいることを表している.
そして最後の一節
光に向かって綺麗に咲いた
ひまわりのような物語
夢を追う「キミ」がしっかりと〈夢=光=青空〉に向かって花開いていくというこの曲の本質をこの詞がはっきりと示していると感じる*1.
2番Aメロ
握りしめた切符を
上手に隠してきたから
回り道をしたけど
これだけは間違いじゃない
切符には終着点がある.つまり夢の到達点までの道程に紆余曲折あれど,目指した夢こそ間違いではない,そう訴えているように感じる.
2番サビ
1番と2番で対照的な詞がある.それは
夢を追い越す子供みたいさ
と
大人になんかなるなよだって
である.この「子供」と「大人」という対比,実は「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」にも用いられており,それは
何も知らない子供と
夢を捨てた大人の間でまた少しづつ変わってく
という部分である.
この曲も,「現実」に逃避してしまい夢を諦めるような「大人」になるなということを示唆しているのだと思う.
ひまわりだって
雨に耐えて
太陽だけを見つめてる
「僕らは青空になる」が伝えてくれたように,光を見つづける,目標に向かって一意専心することはそんなに簡単なことじゃない.でもひまわりだって苦難の中にありながらも一心に太陽を見つめているんだ.
間奏後Cメロ〜ラスサビ
ラスサビ最後の一節は
光に向かって綺麗に咲いた
キミだけをいま見つめてる
であり,キミがひまわりのように〈光〉つまり〈夢〉に立ち向かうという様を描写し,「僕」はそんなキミをずっと見つめ続ける.こうして「キミ」もいつか誰かの〈光〉になるんだ.
長々となってしまったが,以上が「ひまわりのストーリー」から読み取ることができるナナシス像である.
777☆SISTERS の楽曲たちは背中を押して送り出すといったような解釈ができるがこの曲はキミに寄り添いながら,ともに歩もうという姿勢が Le☆S☆Ca らしいのかもしれない.
「太陽」と「ひまわり」,そして「ひまわり」と「キミ」,「太陽」と「青空」などアナロジーが多すぎてラスサビの解釈がまだ十分にできていない.しかし,この世にまた最高の楽曲が産み落とされたということは確信を持って言えるだろう.
もちろん,ここに書いてあることは私の主観であるので,これを読んだ人の解釈は自由であることを補記しておきたい.
そしてこの記事を読んでくれた人が「ひまわりのストーリー」に対して新しい視点を持って聞いてくれれば至上の喜びである.
2018.07.19 追記
ひまわりのストーリーについて,先達が考察していたブログがあるので,備忘録的に記録しておく.どちらもゲームという側面からも接近しているので,説得力のあるものとなっている.
・ナカイ氏
・SAK氏
*1:この話が書きたいがためにここまでの前座があった